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■第8回 小学校英語教育学会(JES) 福島大会 レポート
7月20、21日に福島県郡山市で第8回 小学校英語教育学会(JES)が開催されました。アジアネット教育研究所は2日目のプログラムに参加して参りました。
来場者数は昨年より増加したとのこと、小学校英語活動必修化の影響でしょうか。会場では、さまざまな小学校での実践や研究、研修などについて発表があり、会場からも積極的な意見がありました。その中から参加したトラックのレポートをいたします。
日時: |
2008年7月20日(日),21日(月・祝) |
会場: |
ビッグパレット福島 |
主催者: |
小学校英語教育学会(JES) |
集客: |
約357人(JES公式数字) |
発表トラック数: |
分科会、シンポジウム、討論会など約50題 |
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【自由研究発表:英語マルチカルタを使った生活語彙の指導】
発表者:西垣知佳子(千葉大学)、小松幸子(千葉大学教育学部付属小学校)、中條清美(日本大学)
生活語彙500語をリストアップしてイラストカルタにし、小学校教諭が毎朝授業前に繰り返し指導を行った結果の発表。リスニング力、語彙力のupにつながったという調査結果。大学によるアカデミックな知識と現場での指導力が協同すると大きな力になるというよい例だと感じました。また、データを見せられると誰もが納得でき、子どもによるアンケート結果に頼りがちな小学校英語教育において、有意義だったのではないかと思います。
【課題研究発表「小学校外国語(英語)活動を担当する教員の授業力について」】
提案者:齋藤榮二(京都外国語大学)・梨庸雄(元京都ノートルダム女子大学)・湯川笑子(立命館大学)・田尻利恵子(小学校英語アドバイザー)・田縁真弓(立命館小学校英語科アドバイザー)・相川真佐夫(京都外国語短期大学)・真田恵美子(小学校英語アドバイザー)・佐藤歩美(アジアネット教育研究所)
2007年10月より開始したJES研究会の途中結果発表。本研究会にはアジアネット教育研究所も参加させていただき、勉強させていただいています。JESの研究会ということで、この時間はこの研究発表のみ行われたため、会場には約200人の参加者が集まり、ほぼ満席でした。授業力をはかるためには、共通の指標が必要という考えをもとに作成した授業ビデオ診断表を配布し、診断表を作成するに至ったいきさつや使い方が説明されました。研究会は2年間のプロジェクトのため、診断表に改良を加えながら、研修を行うのが研究会の最終目標です。会場からは、国際理解、情緒教育についての指標が足りないなど、具体的な改善案をいただきました。
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発表の様子
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会場の様子
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【ワークショップ「学年別アクティビティのワークショップ〜中学年向けアクティブティ」】
講師:久埜百合 (中部学院大学)
リピート練習させるのではなく、ListeningからSpeakingが自然に発生するような、話したいという気持ちを起こさせる活動をしようというお話でした。久埜先生には、当社のeラーニングコース「即実践!ベテラン先生に学ぶ小学校英語活動」の制作時にもお世話になり、小学校英語についてたくさん学ばせていただきましたが、今回も短い時間に多くのことを学ぶことができました。以下に一部をご紹介します。
・Listening がすべての言語スキルのベースになるので、Listeningをおろそかにしてはいけない。
・小学校英語活動では、「楽しさ」というのが強調されるが、
楽しさというのは、ゲームでただ楽しいというのではなく、〜ができるようになった、〜ということばが使えるようになったという楽しさであるべき。
・発音などは、口の形のイラストや理論で説明させるのではなく、先生がその音を強調して発音すると、子どもは日本語との違いに面白がって、真似しだす。英語を音として感覚的にとらえさせることが大切。
・低学年は単純なゲームでも楽しく活動できるが、中学年になってくると自我が芽生えてくる。4技能(listening, speaking, reading, writing)+oneで、"thinking"が大切。子どもの気づきをひろって、それをもとに広げるとよい。
【自由討論:テーマ「小学校外国語(英語)活動を教える教員の望ましい授業力とは」】
講師:齋藤榮二(京都外国語大学) ・ 田縁真弓(立命館小学校英語科アドバイザー)
事前に会場で集めた質問をもとに会場からのアドバイス、田縁先生からのアドバイスをいただくというインタラクティブな趣向で行われました。会場からの意見として、教員の英語活動に対する意欲がない、英語というだけで苦手意識を持つ先生が多い、どのくらい英語ができなくてはいけないのか、というような現場の困惑が伝わってくるものが多かったのが印象的でした。
田縁先生から、たくさんの心強い、説得力のあるアドバイスをいただきました。田縁先生ご自身も中学・高校と英語が苦手で、英会話スクールに行くようになり、ある先生をきっかけに英語が好きになったそうです。その先生を田縁先生は、「わたしにとって英語のおかあさん」と表現され、小学校英語活動では、たくさんの子どもの英語のおかあさんになることができるので、これはとても幸せなこと、ぜひ先生方も前向きにとらえてほしいとお話されました。
会場の
梨先生からも、現場は「ないないづくし」ということだが、「ない」ことを数え上げればきりがないが、「ある」ことを数えてみたらけっこうあるのではないでしょうか、前向きにいきましょうという励ましをいただきました。
齋藤先生は、前日のシンポジウムで、JES会長渡邉時夫先生および、文科省の菅正隆先生が、小学校外国語(英語)活動は必修化されたといってもまだ、種と苗の準備ができた程度、これをどのように埋めて育てていくかはこれからである、というお話をされたことにふれられ、これからみなさんで考えていきましょう、という呼びかけをされました。
◆◇◆レポートの結びに・・・◆◇◆
JES福島大会には英語活動に熱心な教員の方々がいらっしゃっていたと思いますが、英語が苦手な先生もあまり英語活動に乗り気でない先生も、ぜひ子どもたちと一緒に英語を楽しんでみてはいかがでしょうか。言語は、文化や社会、また私たち一人ひとりのアイデンティティとも深い関係があるといわれています。英語活動をとおして、先生自身が言語のおもしろさに気づかれるのではないでしょうか。また、子どもってこんな力もあるのか!と新しいおどろきにも出会えるはずです。