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■リレーコラム
      〜ヘルスケア・マネジメントにおける諸問題を考える

第20回 認知経済学と医療 (2)
藤井大輔(多摩大学リスクマネンジメントセンター フェロー)

 認知経済学はまだ提唱され始めた分野であり、古典的経済学の前提の合理的経済人からの逸脱を心理的な傾向として表した「行動経済学」、ミラーニューロンの発見による社会と脳のつながりを明らかにし共感の動きをつかみつつある「脳科学」、内発性や社会的自我による社会の中での個の意識の繋がりを明確にしていく「心理学」、そしてそれらを概念として包み込み、包括していく「哲学」と様々な学問の交わりの中で生まれ出でる 学問である。

 共感を明確化することで、均衡という結果を受け取ることしかできない市場原理主義や意見表明の多数決で推し量ることしかできなかった 社会民主主義的政策より、より現状の人々が共感を得られる規範が得られるのではないか、と考えられる。

 医療の現場においても、この共感を明確化できることは実に大きなメリットがある。現状の日本の医療は発展途上国の拡充を目指し、拡大が社会の潜在力を上げる 段階から、成熟した経済の中で、どれぐらい社会の富の配分を費やせるのかという段階に移行しているのは明らかである。しかし、医療を貫く倫理、規範は 未だ最大限の技術と機会をすべての人に必ず与えなくてはいけないという、経済の分配の概念からは程遠いものである。医療従事者への分配費用の 低下という自己犠牲で保ってきた日本の医療も限界である。 現在の医療を貫く完全を目指した規範だけでは、これ以上は分配の余剰がなくなり、国民は結局無秩序なシステムの崩壊を受け入れざるを得ないであろう。 そして完全を目指した規範から逃れることができない医療者は立ち去るか、転回し国民側に自由競争を強いる完全な自由診療を推奨する思想を 極論として、目指さざるを得ない。

 万人の共感が明確化できれば、それを規範とし、目指す医療の形が見えてくるのではないか。大きな声に引っ張られた多数のフリーライダーを 生み出し続ける規範を守ったまま崩壊するより、万人の共感と現状の齟齬を調整していくほうがはるかに日本が進むべき医療に近づいてゆけるであろう。 そして医療者も完全を求めた規範に振り回されるのではなく(もちろん対人サービスとしての側面でなく医療全体をとらえた哲学である)、流動性があり、 より現状に即した共感を目指した規範を持つことで、拒絶や極論に走ることなく、医療全体の中での自らの意義と価値を確認できるのではないか。


2009年10月28日
 
藤井大輔 (ふじい だいすけ)
 

多摩大学リスクマネンジメントセンター フェロー


著書・その他:
医師のための社会保障知識(治療, 90(4) : 1611-1616, 2008.)

 

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