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■リレーコラム
〜ヘルスケア・マネジメントにおける諸問題を考える
第17回 |
行き詰る病院経営の原因1 〜装置産業としての医療〜 |
鈴木 忠(株式会社メディカルクリエイト ディレクター・医師)
装置産業とは、生産やサービスに巨大な設備や施設が必要な産業のことをいい、石油化学工業など重工業はその典型といえます。また、テーマパークや
ホテル業といった業態も大きな施設があって初めて収益が生まれる業種です。
そういう意味では、医療はじつは装置産業といえます。病床を揃え、CTやMRIなど高価な医療機器を揃え、手術室など建築コストのかかる施設を用意し、
さらに医師や看護師をはじめとする多くの職員を準備することで初めて営業が可能となります。
いま、多くの病院で病院建築にまつわり経営に行き詰る例が数多くみられます。ひとつは、建築物にコストをかけすぎてしまった上に、建てた後にきれいな病院
には患者が集まるといった希望的観測があるなど事業計画の甘さからくる経営困難があります。そして、もうひとつは、病院施設が老朽化してしまって
いるなか、建て替えるだけの自己資金がないあるいは借入残高が残ってしまっており、金融機関からの融資が受けられないといった中、じり貧になってしまっている例です。
特に無理な事業計画のもと高価な建設を行ってしまい、莫大な債務によって民事再生などに行きついてしまう例が増えているように見受けます。そういった
病院に共通するのは、必要以上に瀟洒な建築物であることです。しかし、たとえば、スーパーマーケットが瀟洒な建物を建てるでしょうか。中にはそういうものもあるでしょうが、多くの場合建築コストの削減に躍起になっているはずです。
医療はスーパーマーケットと違うといわれるかもしれませんが、少なくとも利益構造は似ています。テーマパークでは豪華で夢の世界があれば、人が
集まりたくさんのお金を落としていくはずです。しかし、医療やスーパーは豪華な建物だからといって必ずしも人が集まるわけではありませんし、豪華だからと
いって提供サービスが高くてもお金を払うというものではありません。どちらかというと薄利多売です。特に医療は公定価格が存在しますので、豪華だからといって料金を高くできるわけではありません。
重要なことは何を目的とした装置なのかということをしっかりと考えて計画を立てることなのかもしれません。
2009年6月17日