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■リレーコラム
      〜ヘルスケア・マネジメントにおける諸問題を考える

第7回 国際化とは国内を見つめ直すこと(1)
岡本 左和子 ( Health Communication Specialist )

 「グローバライゼーション(国際化)」という言葉が当たり前のように聞かれるようになって久しい。テクノロジーの進歩とIT革命に伴って国境や時間に関係なく人、商品、資金が行き来する。そして、国際化と言う時、地球規模の展開がイメージされ、大体においては前向き、または好意的に受け入れられているように感じる。

 少し事情は異なるが、医療においても国際化は避けられない。欧米で開発された医療テクノロジーが日本に紹介されるのはあっという間だし、その逆もしかりである。医療診断や治療の進歩と国境を越えた情報交換によって、医学が飛躍的に進歩したことや医療現場が便利になり、快適になったことはいうまでもないが、同時に不便なこともある。

 医療の国際化に伴って、カタカナ医療用語が目立つようになってきた。インフォームド・コンセント、セカンド・オピニオン、アドボカシー、リスクマネジメント等々に加え、CT、MRI、EBMなど英語の省略形も混じって使われる。日本語に訳すと返ってまどろっこしく、わかりにくいこともあって、外来語をそのままカタカナ用語や英語の省略形で使うことが多い。メディアも最初は言葉の説明をするが、その内に当たり前に使いだす。そしてメディアに頻繁に掲載されるとみんなが知っていると錯覚されるが、本当に理解されているのだろうか?

 患者へのアンケートで「インフォームド・コンセント」という言葉を使ったところ、「こういうカタカナ用語を使うから患者はわからなくなる。患者のことを考えているのか」とおしかりをいただいた。別の調査からも、カタカナ医療用語が医療者と患者の間の理解を難しくしているようだとわかった。メディアなどで頻繁に耳にするとわかったような気になり、患者は相槌を打つ。医療者も説明を忘れてその言葉を使うようになるが、医療者と患者で同じ概念を共有しているかは怪しい。さらに欧米で始まった概念をそのまま持ってくることも多い。 「患者中心の医療」や「患者の医療への参加」など日本語に訳されているために理解していると錯覚するが、欧米由来の医療概念を日本の医療者と患者で共有しているのかは疑問である。

◇コミュニケーションは概念の共有から始まる

 医療技術の高度化によって、医療の不確実性の理解度と医療情報の非対称が作る医療者と患者の溝は深くなり易く、患者のニーズの多様化によって 患者への対応が複雑化している。立場と認識の違いを克服し、対等でより良い関係を構築するには、お互いの理解と努力が不可欠で、単純に伝統的な 「赤ひげ先生」を求めるのでは解決しない。ここにコミュニケーションが重要な役割を果たすと考える。

 コミュニケーションは、情報の送信側と受信側があり、受信側からのフィードバックがあって始めて成立する。しかし社会的要因が作るノイズ―環境、知識・情報量、個性など―が情報を歪めることに大きく影響する。コミュニケーションを通してより良い関係を築くには、情報を受取る相手の理解度やニーズなどの anchor points(相手が何に焦点を当てて話をきいているか)を考慮し、医師と患者双方からの取り組みと共有できる基準やツールが必要である。 その第一が、言葉の基本概念を統一することだ。

 例えば、最近よく耳にする「患者の医療参加」だが、この言葉を使う時、医療者は、患者が権利を正しく理解し、義務を果たし、患者としての自立を 期待している。具体的には、患者がなすべき事として、「質問をする、正確な情報を医療者に提供する、疑問や心配事はきちんと言葉にする、医療指示を守る」ことなどが求められる。しかし、患者は、患者の言うことをなんでも聞いてもらえる、思う通りにしてもらえる、患者が医療に満足できるように医療者が頑張ってくれるなど、依然として依存する姿勢は変わらないままに、権利だけを主張することにもなりかねない。このような状況で「患者中心の医療」と連呼してみても、お互いがまったく違ったことを思い描いて話をしているのでは具体策はおろか、方向性さえも定まらないだろう。    <<次回に続く>>

2008年8月8日
 
岡本 左和子 (おかもと さわこ)
岡本左和子( Health Communication Specialist )

1995年より約5年間、米国Johns Hopkins HospitalのInternational Servicesにて日本人およびアジア地区のSenior Patient Representative として勤務。
現在、Health Communication Specialist として学術会議での講演、執筆活動をしている。

著書・その他:
患者第一 最高の治療―患者の権利の守り方 (講談社プラスアルファ新書、2003/10)

 

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