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■リレーコラム テーマ 2. こうすればもっと良くなる!授業実践

第12回 アクション・リサーチのすすめ(1)
佐野正之(松山大学大学院教授)

 今回から2回にわたり、授業改善の方法についてみなさんと一緒に考えてみたいと思います。
基本的な流れは、私からクイズを出し→みなさんから答えてもらい→私の回答を紹介して→みなさんにさらに考えてもらう、というパターンで進みます。それでは始めましょう。


◆ クイズ−1:「良い教師」に必要な資質・能力には、人間性と授業力(含む英語力)のほかに、もう一つ欠かせないものがあると いわれています。それは次のどれでしょう?

 (a. 表現力  b. 読書力   c. 研究能力  d. 授業改善力 )


 PISAテストで「学力世界一」となり有名になったフィンランド教育から、学ぶべき点がたくさんありますが、中でも教員養成のあり方が参考になります。そこでは、教員に必要な資質能力として、3点を挙げています。そのまず、第1点が人間性です。 

 教師という職業には人間的な素質、すなわち、優しさ、忍耐心、寛容、想像力、使命感、コミュニケーション能力などが必要とされます。 中でも人と協働して仕事にあたるコミュニケーション能力は不可欠で、この力のない人は教員になるべきではないというのがフィンランドの発想です。では、それは大学ではどのように養成されるのでしょうか。

 実は、大学では何もしないのです。その理由はこうです。人間的な資質は大学で教育できるものではないから、最初から放棄する。資質のない者が入学しないように、読書感想文や面接でチェックする。入学後に発見されたら、ただちに別の進路を薦める。なぜなら、本人が苦労するばかりでなく、生徒が被害をこうむるからだというのです。ずいぶん冷たい感じもしますが、税金を無駄に使わないためにも、適材適所を徹底させるのです。

 第2の能力は授業力です。この点でもフィンランドは徹底していて、大学入学と同時に、2つの実習校と大学との連携で作成されたカリキュラムによって、500時間に及ぶ教育実習やその後の個人指導が緻密に実施され、授業力の項目をひとつずつクリアしてゆきます。その際に用いられるのがポートフォリオで、個々の学生が成長の足跡と証拠を収録し、振り返りを通じて授業力を成長させてゆくことが求められています。

 第3の能力は、これがクイズの回答になる授業改善力です。「良い教師は、いかなる環境でも、時代の変化にも対応して、最高の授業を 生徒に提供する義務がある。それには、現在の授業に満足せず、常に自分の授業を改善してゆくことが求められる。そのためには、大学・大学院で、研究や実践を参考に授業改善を目指す力( research consume 力)だけではなく、自力で問題を調査し、対策を練り、実行して成果を確認したら、それを発信する力( research producer力)をつけることも必要で、後者として最も一般的に用いられているのがアクション・リサーチである」というのです。


 

◎設問(ご自分の振り返りに役立ててください):あなたの人間力、授業力、 授業改善力を自己評価してください。


◆ クイズ―2: しかし、忙しい現場で、リサーチをするだけの時間があるでしょうか。この場合のリサーチは、どんな内容なのでしょうか。

  (a. 論文を書く、 b. 文献を読む、 c. 実態を改善する、 d. 指導法の発見)


 正解は「c. 実態を改善する」です。ここでのリサーチは「系統的に調査する」という意味で、私たちが日常生活で行っていることと重なります。 たとえば、体調が悪かったとします。私たちはまず、体温計で熱を測り、自分の最近の生活を振り返ることで実態を把握しようとします。次に、その様子を見て、休息したり、薬を飲んだり、治らなければ医者に診てもらうでしょう。まず、実態を正確に把握し、その結果で適切な対策を立てます。授業改善も同じことです。「上手くいかない」問題に気づいたときには、まず、正確に実態を把握し、それに応じて対策を立て、解決を図ろうとします。それがアクション・リサーチなのです。

 「振り返りなら、いつもやっている」と思われた方も多いと思います。実は、アクション・リサーチは、この普段行っている振り返りをより体系的に論理的に実施し、対策を長期的に実施することによって問題解決を図る方法なのです。 その結果、授業がより楽しく意味のあるものとなり、教師のプロとしての成長も促すのです。といわれても、ピンとこないかもしれません。日頃の振り返りの欠点を考えてみましょう。

 まず、誰もが「今日は、上手くいった」「駄目だった」という感想は持ちます。ですが、その判断基準は明らかでしょうか。多くの場合、生徒の盛り上がりや教師の満足度という印象で終わりがちです。印象も大切ですが、成功や失敗は目指した目標が達成できたか否かで判断されるべきです。当然、判断基準が明確でなければなりません。実は、多くの振り返りは、基準が明確でないまま、印象だけで終わってしまうことが多いのです。

 また、振り返りには理論的な裏づけが必要です。たとえば、「生徒に活気がない」という問題を扱うとしたら、動機に関する研究や、classroom management の知見に裏打ちされた振り返りが望ましいのです。より具体的には、求められている英語の難易度、クラスの人間関係、英語活動の題材、 学習歴、個人差などなどから、原因を探るための振り返りが行われなければならないのです。

 第3点として、日頃の振り返りは次の授業に生かすかという視点がなくて終わりがちです。未来につながらないのです。結局は、「この1年間でどのように成長してほしいか。何ができる生徒になって欲しいか。だとすれば、今の時期ではどこまでできるようになって欲しい」という視点がないと、長期的で建設的な振り返りができないのです。

 まとめると、アクション・リサーチはこうした日頃の振り返りをより体系的に実施することによって、直面する問題の解決を目指すだけでなく、教師の成長も視野に入れた教師のための、教師によるリサーチなのです。


 

◎設問(ご自分の振り返りに役立ててください):最近ご自分で実施された英語活動を思い出してください。上手くいった点は何ですか? 改善したい点はありませんか?どんな風にすれば改善できそうですか?


 次回は、さらに具体的にアクション・リサーチの進め方について、クイズを交えながらお話します。

2009年2月25日

 
■ 佐野正之 (さの まさゆき)
佐野 正之
(松山大学大学院教授)

松山大学大学院教授。

著書・その他:
はじめてのアクション・リサーチ―英語の授業を改善するために (大修館書店、2005/07)
アクション・リサーチのすすめ―新しい英語授業研究 (英語教育21世紀叢書) (大修館書店、2000/04)
異文化理解のストラテジー―50の文化的トピックを視点にして (大修館書店、1995/03)
英語劇指導マニュアル (玉川大学出版部、1990/06)

 

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