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■リレーコラム テーマ 2. こうすればもっと良くなる!授業実践

第9回 指導法について〜指導方法の基本(2)
渡邉時夫(清泉女学院大学教授)

 前回は、先生やALT(Assistant Language Teacher)の簡単な発話を繰り返し 聞くことを通して、理解しながら次第に生徒(学習者)が話す力を習得していく 指導方法(TPR)について学びました。

 今回は、まず生徒が、徐々に複雑な内容のインプットを理解していく指導法 について考えて見ましょう。  

◆ 1.はじめに

 子どもたちが、異文化や文化の様々な局面に触れて考えたり、言語の面白さや不思議さに気付くためには、"Make a circle."とか"Let’s play a game."や"Draw a picture."などの断片的な英語に触れているだけでは十分とは言えません。 個々の文(sentence)が理解できるだけでなく、(複数の文が集まって一定の考えや感情を表わす)Discourse に対する理解力も育成したいものです。そのような教育に成功している実践例を二つ紹介しましょう。


<実践例 1> 
 日米の「啄木鳥(woodpecker)」の習性の違いを紹介した授業です。
 日本の啄木鳥の話を聞いたALTは、彼女の故郷(hometown)の啄木鳥との習性の違いに気付きました。彼女のhometownの啄木鳥は浅い穴を掘り、どんぐり(acorn)を一つずつ埋め込んで冬の準備をします。しかし、日本の啄木鳥はもっと深い穴をあけ、沢山のどんぐりを蓄えます。アメリカの啄木鳥は群れをなして働き、一本の木に1,000個もの穴を掘るのです。
 英語で次のような説明をします。

 

In Japan, woodpeckers make very large holes on the tree.(啄木鳥が木をつついている写真)
They put many, many acorns in the big holes.
But in America, in my town, they make very small holes.
Their holes are very small. They put one acorn in one hole. (実際のどんぐりを使う。ジェスチャーを多様)
Woodpeckers work on one tree together. They make a team and make holes on the same tree.

 

 HRT(Home Room Teacher)が、子どもたちに向かって、「いずれの啄木鳥の方が賢明だろうか」と問いかけると、子どもたちは、次のように答えました。
 「どちらが賢明かという発想は望ましくない。違いは、おそらく環境の違いからくるものでしょう」
 このことから、地域や国の違いによる人間の文化の違いも同様で、生活習慣などの違いについて、優劣という視点から考えるのは正しくない、という結論に達したのです。このような内容は、視覚教材やジェスチャーなどの助けを借りながら、すべて英語で行われました。


<実践例 2> 
 スコットランド出身のALTに、日本の家庭料理を食べてもらおう、という授業です。
 子どもたちは、イカの煮物、ジャガイモの煮物、味噌汁などを作り、ALTに食べてもらいました。イカの煮物は匂いがきついので、ALTには抵抗があったようです。しかし、ジャガイモの煮物を味見したALTが、
“I like potatoes. Well, in our country we eat potatoes everyday. Monday, Tuesday, Wednesday, everyday.” と説明したところ、数名の子どもたちから、「よく飽きないなあ」という驚きの声が聞かれました。すかさずALTが、 "Do you eat rice everyday?"と聞いたところ、子どもたちから「ああそうか」という納得の言葉が漏れました。ALTはほとんど英語で応対していましたが、 こどもたちは文脈からALTの意図を理解していました。


 さて、上に紹介した授業は、ほとんど英語で進められていたにも関わらず、子どもたちはポイントを十分に理解していたのです。なぜでしょうか。それは、ALTが、子どもたちに理解してもらうための英語の使い方(コツ)を理解していたからです。ALTに対して、「易しい英語を使ってください」と要求するだけではなく、「理解可能な英語のインプット」とは何かについて、ALT、HRT共々研究・理解し、そのような英語を使えるよう努力しなければならないと思います。

 そのようなインプットの与え方 の一つとして MERRIER Approach 「メリアー・アプローチ」を紹介しましょう。

◆ 2.MERRIER Approachの紹介

 これは、次の7つの単語のイニシアルを結んだ造語です。この7つの単語は、指導者(ALTや先生)が子どもたちに向かって英語を話す時に留意すべき視点を表しています。


 

Mime ( or Model), Example, Redundancy, Repetition, Interaction,  Expansion, Reward

 

 次に、それぞれの視点について、簡潔に説明しましょう。

(1)

Mime ( or Model)
話す時には、ジェスチャー、表情を効果的に使いましょう。また、写真、絵、イラスト、地図、グラフ、表、実物などを活用しましょう。「シンクロナイズドスイミング」を説明するには、一枚の写真を示し、”This is synchronized swimming.”と言えば、即座に理解してもらえます。

(2)

Example
大人が話す内容はとかく抽象的になりがちです。「抽象のはしご」を上り下りしながら話すことが大切です。”Australia is a large country. “と言っても、なかなか理解してもらえません。日本とオーストラリアの地図を並べてみせるのも一案です。しかし、英語を通して理解させることが大切です。例えば、こんな風に説明したらどうでしょうか。
Australia is 8 times as large as Japan. Let’s cut Australia into 8 parts.
(オーストラリアのイラストを8等分する)
Japan is only one of them. Australia is a very big country.
こうすれば、オーストラリアの大きさが実感できます。

(3)

Redundancy
一つの事柄を説明するのに様々な発想を用いることが大切です。
例えば、黒板に書いてある文字をノートに写させたいと思ったときを想定してみましょう。
"Please write down the words on the board." と繰り返すだけでなく、"Please copy the words on the board." と言い換えてみる。さらに、全く発想を変えて、"Please open your notebook." と指示したり、 "Have you got your pencil?"と聞いてみたりする。これらの指示によって、子どもたちは、「何かを書くんだな」と予想するでしょう。優秀な子どもは、 先生の出すすべてのヒントを理解するでしょう。また、slow learners もヒントの内、どれか一つを手がかりにして、先生の意図を理解します。
We can teach our students according to their ability differences.
(学力に応じた指導も可能になります)

(4)

Repetition
これは、文字通り、大切と思われる表現等は、繰り返し何回でも使うことです。 既習事項は何回も、できれば異なった言語使用場面で使ってみましょう(spiral な使用)。

(5)

Interaction
多量で多様なインプットを使うことと同様非常に大切なことは、生徒とのインタラクションを忘れないことです。Interactionは重要なので、特別に項目を改めて説明します。

(6)

Expansion
インタラクションを行うと、子どもたちは英語や日本語で応対します。 子どもたちの英語は大人から見たら不完全の場合が多いのは当然です。 しかし、彼らの誤りや不完全さを指摘する代わりに、指導者は、自然な形に直して繰り返して発話をしてやります。
例えば、"It is winter in Japan. What is the season in Australia now?" に対して生徒が"Summer." と答えた場合には、 "That’s right. It is summer in Australia now."と返してやることです。また、"In Australia, there is no snow. How does Santa come to Australia?" に対して、生徒が「馬に乗ってくる」と日本語で答えた場合は、"No, he does not come on horseback." と英語に直してやると良いでしょう。

(7)

Reward
正しく受け応えが出来た場合には、必ず褒めてやることが大切です。 その場合、漠然と"You did a good job." ばかりを繰り返さずに、良かった点を 具体的に指摘し、様々な英語表現を使うように心がけたらいかがでしょうか。 音声に関して例を挙げますと、"Your voice was very clear." とか、 "Your English was very good. Very easy to understand." とか、 "Your rhythm was very beautiful." 等々です。

 次にInteraction について少々細かく説明したいと思います。

◆ 3. Interaction の活用について

 生徒とのInteractionが大切であることは当然ですが、生徒の発話に関して指導者が心得ていなければならないことは、むやみに発話を生徒に強制しないことです。子どもたちは、おしゃべり(chatterbox)ではありますが、発話を強制すると、次第に抵抗を感じ始め、ついには英語嫌いになっていく者が多いことが分かっています。そこで、Interaction に際しては、次のように行うことを提案いたします。


 (1) Teacher talks and students listen to him.
 (2) Teacher talks and students give physical response.
 (3) Teacher talks and students give short oral response.
 (4) Teacher talks and students give longer oral response.


<具体例> *(1),(2)などの数字は、上記の数字に相当。

(1)

Yesterday it was very fine and it was very hot. But today, it is cloudy. I like today’s weather.
I made a very big mistake this morning. Television said it will be rainy this afternoon.
Did you take your umbrella with you today? (生徒に答えは期待しない)
I took my umbrella with me. But I made a big mistake. Do you know what? I left my umbrella on the train.

(2)

Now, let’s play BINGO. First, please draw a chart like this.
(黒板に9つのマスのあるチャートを書いて見せる)(生徒は先生に真似てノートに描く)
I'm going to write names of many fruits and vegetables on the board. Please choose 9 fruits and vegetables. Put one in each box.  (例として、先生は、apple をboxの1つに入れる。) You can choose any fruit or vegetable you like. Put them in any box.

(3)

(生徒が9つのboxすべてに果物か野菜の名前を入れた頃を見計らって)
I'm going to tell you about a fruit or vegetable. Tell me its name in English.
(例えば) This is a fruit. It is long. The color is yellow. What is it?
(答えを一斉に生徒たちに言わせても良いし、誰かを当てて言わせても良い)
(bananaと書いてある生徒はbananaを○で囲む)

(4)

(BINGOが沢山出たころ)
I’ll tell you the name of a fruit or vegetable. Please tell me something about it.
(先生はbananaを例に、"It is yellow.""It is long. It is sweet."などと答え方の例を示す。)

 上記のようにInteractionを進めると、生徒の緊張感を和らぐことができ、さらに、学力の低い子どもも単語を言う程度のところまでは自信を持ってついていくことができます。学力に応じた指導も可能になるでしょう。

◆ 4. MERRIER Approachを使ったTeacher Talkの例

最後にALTによるTeacher Talk の良い例を挙げてみましょう。

(1)

場面 --- クリスマスが近づき、クリスマスキャロルなどを歌って、 クリスマスの雰囲気が出ている授業。

(2)

ALT---オーストラリアの出身

(3)

授業の狙い--- 日本とオーストラリアの違いに気付かせる

(4)

準備する教材--- 世界地図、サンタクロースがサーフボードに乗っている絵

(5)

ALTの英語によるTeacher Talk---
Please look at this.(世界地図を見せながら)
This is Japan. This is Australia.
It is very cold in Japan now. It is very hot in Australia.
(寒さや暑さを表すジェスチャーや表情)
We have much snow here in Japan. But there is no snow there in Australia.
(状況の違いを具体的に示したり、コントラストを多用する)
In Japan Santa will come by sled (そり). But in Australia there is no snow.
(状況の違いを繰り返す)
How does Santa come to Australia?
(予想される生徒の反応--- Boat, Horse, Bike, etc.)

◆ 5. おわりに

 生徒に分かるインプットを多用し、生徒がtop-down 式に、コンテックスを援用しながら理解していく listening 重視の指導法を紹介しました。生徒の自発的な発話は奨励しつつも、発話を強制するような指導を慎むべき であることを強調しました。そうは言っても生徒と先生のInteractionは、楽しい授業の創造を考えて、 欠かすことはできません。そこで、Interactionの進め方についても、具体例を提示してみました。 何よりもALTに上記のような考え方を良く理解してもらうことが大切です。私の経験によりますと、上記の指導原則を心がけて指導に当たる先生は、当初は英語使用に戸惑っていても、1年もしますと、見違えるように見事な英語使用者に成長しています。

2008年11月27日

 
渡邉時夫 (わたなべ ときお)
渡邉 時夫(清泉女学院大学教授)

清泉女学院大学教授。

著書・その他:
英語が使える日本人の育成―MERRIER Approachのすすめ (三省堂、2003/5)
実践的英語教育の進め方―小学生から一般社会人の指導まで (21世紀の英語教育を考える) (ピアソンエデュケーション、2002/9)
新しい英語の学び方・教え方 (21世紀の英語教育を考える) (ピアソンエデュケーション、2001/9)
インプット理論の授業―英語教育の転換をさぐる (英語教育叢書) (三省堂、1988/9)

 

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