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■リレーコラム テーマ 1. 教師の資質とは

第12回 20年後の子どもたちへ ―発達するということ―
芳野郁朗先生(博士(人間科学))

◆ エデンの庭師 ◆

 生まれたばかりの子どもの心は、ある意味で楽園です。エデンの園に住んでいた時のアダムとイヴのようです。自分と他者の区別も無く、社会の理不尽さに怒ることも、どうしようもない恐怖に打ち震えることもありません。すべてが満たされ、完成された世界です。

 この楽園には、一本の木の苗が生えています。一人一人の子どもたちの生きる力の木となる苗です。成長するにつれ、四方八方に枝を伸ばし、すべての方向に伸びていこうとする活き活きとした木です。しかしこの木には、伸びてゆく枝のすべてを支える力はありません。必要な枝を残し、不必要な枝を落としていかなくてはなりません。そうしないと、木全体が朽ち果ててしまいます。

 この剪定作業は、子どもたちがこの世に生まれてすぐに始まります。たとえば生後すぐの子どもたちは、世界中に数多くある言語で使われる すべての音を聞き分ける力を持っています。しかし半年ほど経つと、普段耳にしていることばで使われない音は聞き分けることができなくなっていきます。私たちが外国語の発音を聞いても、何を言っているのか分からないのは、このメカニズムが影響しています。子どもたちは自分に必要ない力を捨てていくことで、生まれた世界に合わせ、必要な力を伸ばしていくことが できるようになります。

 しかし人間が生きていく社会は非常に複雑です。先達の助けなしには、必要な力を充分に伸ばしていくことはできません。エデンの園は、庭師を必要としています。不必要な枝を切り、肥料を与え、水をやる。腕のいい庭師が必要なのです。それが教育に携わる人達です。

 このような話をすると、「子どもたちの個性を潰す」という批判が出てくることもあります。心配することはありません。庭師が有能であれば、どれほど手を 入れたところで、松は松として、桜は桜として、杉は杉として活き活きと育ちます。同じ松でも、一つとして同じ木はありません。腕のいい庭師は、その木が持って いる長所をうまく引き出し、素晴らしい調和を生み出します。本当の個性とは、子どもと、子どもを育てる大人が力を合わせて作り出していくものではないでしょうか。

◆ 子どもたちへのメッセージ  ◆

 教育とはメッセージです。今を生きる私たちから未来を生きる子どもたちへの、希望を託したメッセージです。どんな木に育ち、どんな花を開かせてほしいのか、子どもたちに伝え続けます。「どんな大人に育って欲しいと考えているのか」、「どのようにして社会とつながり、どのようにして身を立てていって欲しいと考えているのか」、「どのような人を、どのように愛してほしいと考えているのか」、「自分自身が親の立場になったとき、子どもに対してどんなメッセージを伝えることができる大人になってほしいと考えているのか」、すべて私たちから子どもたちへのメッセージです。

 腕のいい庭師はその木がまだ若いうちに素質を見抜き、将来の姿を具体的に思い描きながら手入れを続けます。子どもを育てるときも同じです。 その子どもが大人になった時、どんな人間に育っていてほしいと願うのかを考えてください。子どもの持って生まれた資質をしっかりと見極めながら、その資質を充分に花開かせている姿を具体的に思い描くことが必要です。その20年後の姿を思い描きながら、今の子どもたちにメッセージを伝えなくてはなりません。

 腕のいい庭師と腕の悪い庭師には大きな違いがあります。腕のいい庭師は、子どもたちが自分のメッセージをしっかりと受け止められるように、木を取り巻く 土地を耕します。子どもたちの今だけではなく、20年後に対しても責任を持とうとし、真剣に向き合う姿勢が子どもたちの心の地盤を和らげ、メッセージが届きやすく します。これに対して腕の悪い庭師は善意から木の周りに忍び込み、気付かぬうちに踏み荒らしてしまいます。その時々に子どもが楽しそうにしていれば それでよいという考えは、肥料や水の与えすぎになり、根腐れを起こします。時には大木の枝を伸ばし放題にし、その重みで木そのものまで倒してしまうのです。

◆ 心を育む心 ◆

 子どもたちに宛てて発信したメッセージは、すぐに届くとは限りません。また届いていたとしても、理解できないこともあります。しかし信念を持って発信し続けたメッセージはいつか必ず届きます。今理解できていなくても、いつか必ず理解できる時が来ます。信念の籠ったメッセージは子どもたちの心の中の木に、静かに、ゆっくりと染み込んでいくものです。そうしてこのメッセージは子どもたちの心の中で、ゆっくりと大木に育っていきます。

 子どもたちの心を育てることができるのは唯一つ、子どもたちに一人の人間として誠実に向き合い、響きあう心しかないのです。

◆ 未来に向けて  ◆

 20年後の世界に私たちの愛する子どもたちが、人生の喜怒哀楽を満喫しているために、次の世代の子供たちに素晴らしい人生を受け継ぐことができるように、私たちは自分自身も成長し続けていかなくてはならないでしょう。私たち自身が努力し続ける姿こそが、最良のメッセージに他ならないのですから。

2009年9月24日

 
芳野 郁朗 (よしの いくお)
芳野 郁朗

博士(人間科学)

著書・その他:
ヒューマン・ディベロップメント(ナカニシヤ書店、2007/05)

 

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