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■リレーコラム テーマ 1. 教師の資質とは

第9回 やる気を引き出す先生=魅力的な先生
芳野郁朗先生(博士(人間科学))

◆ 教育と響育、共育 ◆

  “教師の資質”などと難しく構えるより、「教育は、教師と生徒が、面白さと自由と楽しさの中で共に育つこと」だと考えています。私は基礎心理学の出ですが、このことについて少しお話をさせていただければと思っています。

 人間は産まれつき「知ること」、「理解すること」、「考えること」に対して限りない興味を持っているものです。教育とは、人間の「知ろう」、「理解しよう」という欲求に働きかけ、自由な思考の翼に乗って巣立たせるものです。

 教育の第一歩は、知ることの面白さ、考えることの自由さを先生も生徒も共に楽しむことだと思います。教師は「知ることの興味深さ、学びの楽しさ、考えることの面白さ」を自らの体験として実感した上で、これを生徒にわかりやすく伝えなくてはなりません。また生徒の興味や疑問を引き出しながら共に考え、自由で溌剌とした生徒たちの創造性に火をつけることが求められます。

◆ 魅力的な先生 ◆

 大学院時代に心理学と教育についての国際学会に参加した時のことです。この国際学会において、様々な研究者に「どうしたらやる気を引き出せるのか」という質問を繰り返し聞いてみました。納得のいく回答が得られないまま頭を抱えて座り込んでいた私に、英国から参加していた女性の老教育者が声をかけてきました。「子どもたちの手に、カエルをおいてあげなさい。その途端に子供の目は輝きますよ」。当時の私にとって、この答えは従来の動機づけ理論にないものであり、参考になるものとは思えませんでした。

 今になって考えてみれば赤面するしかありません。子どもたちが本当に興味を持っているカエルそのものを、子どもの手に持たせないままで、子どもの興味を引き出そうとしていた私が間違えていたのです。


 自分が講義を行うときにもこの助言は非常に役立ちました。私は講義の準備にあたって、必ずいくつか自分が面白いと思えるポイントを見つけるようにしています。私自身が本当に興味を抱き、発見したことに喜びを感じたテーマについて語るとき、学生たちの興味、関心は高まります。また私の講義そのものも、学生たちからの刺激を受けて毎年リニューアルされ、前年と同じ講義を行ったことがありません。こうした循環が生まれることで教育者と生徒の間に信頼が生まれます。

 教える者、教えられる者という上下の関係を超えて、共に響きあう、育ちあうもの として教育をとらえたとき、教育は響育となり、共育となり、驚育となるのでしょう。

◆ 本当に学ぶべきことは、教えることのできないものである ◆

 このように“やる気を引き出す動機づけ”を十分に理解し実践している教師は、生徒から人間として、指導者として自然な形で信頼されていきます。

 学校では様々な教科を教え、生活指導も行います。しかし成長していく生徒たちにとって本当に大切なことは、「学ぶ姿勢」であり、「生きる姿勢」であるといえます。これが“やる気を引き出す動機づけ”の本質です。 しかしこのことは口頭で教えても、まず伝わらないのが現実です。これを伝えるのは教師自身の生き方、つまり教師として「知ることの興味深さ、学びの楽しさ、考えることの面白さ」の実践しかないと思われます。生徒と真正面から向き合い、共に驚き、共に響き合い、共に育とうとする姿勢が滲み出たときに初めて、生徒たちは教師のその姿から何かを感じ取ってくれます。


 未熟な教師時代の私は、学生たちと真剣にぶつかり合いを経験したことがあります。私の場合、そのぶつかり合いの中で、生徒たちと共に驚き、共に響き合い、共に育とうとしました。その時の学生たちは、今でも結婚や出産の報告、同期での会合など、度々私を呼び出してくれます。 悩みや問題を抱えたときに限って連絡を入れてくる者もいます。本人の予想通り私に叱られた後で、「先生ならそう言うと思った」と元気を取り戻したといいます。共に驚き、共に響き合い、共に育とうとしてできあがった信頼関係は、厳しい指導にも積極的に取り組む精神的土壌すら築きあげていくものです。 …これは理論や理屈ではありません。私自身が学生達から、身を以て教えてもらった事実なのです。

◆ How to は存在しない ◆

 人間にはそれぞれ個性があります。一人の教師が経験の中から創り出したやり方を、別の教師が真似をしてみてもうまくいくものではありません。 一人ひとりの教師が、学びによって「共に驚き、共に響き合い、共に育つ」というスタンスに立ち、生徒の“やる気を引き出す”ために何ができるかを具体的にしっかりと考える必要があると思います。

 教育の本質はHow to ではないと思います。人間同士が琢磨する姿だと思います。そして、それは人間の美徳そのものだといって過言ではないと私は思っています。

2009年6月26日

 
芳野 郁朗 (よしの いくお)
芳野 郁朗

博士(人間科学)

著書・その他:
ヒューマン・ディベロップメント(ナカニシヤ書店、2007/05)

 

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